『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』に見る、すい臓を全ベットした生化学デスゲーム

3.【エンタメ】味覚の探求とカルチャー検証

「破滅的にドカ食いしたい願望は、私の中にも確実に眠っている」

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偉そうにインスリンの完全制圧だの生化学ハックだのを語っているが、告白しよう。かつての私は、「チートデイ」という甘美な免罪符を盾に、最凶の生化学自爆テロを決行したことがある。 それは、低下した代謝エンジンに再点火する『脂肪燃焼システムの再起動』などという戦略に基づくものではなく、単なる無計画な暴食であった。

サウナの極限熱気で限界まで水分を絞り出し、血流が沸き立ち、飢餓状態に陥った空きっ腹。そこへ叩き込んだのは、白米がみっしりと詰まった「特盛うな重(二段重ね)」だった。

甘辛いタレを吸った熱々の米と、脂の乗った極上の鰻を喉へ流し込んだ瞬間は、まさに至福だった。日々の兵糧に美味のテイストを追求する私でも、あの圧倒的な味の暴力には抗えなかった。

食後数十分で訪れたのは――尋常ならざる眠気。
まぶたに鉛の重りが乗ったように動かなくなり、思考は完全に停止、洗い物を放棄して泥のように昏睡した。

あの時、私は間違いなく「至って」いたのだ。
※注:医学的には、急激な血糖値スパイクの果てに起きた重度の反応性低血糖である。自ら精製糖質を多量摂取した結果引き起こされた、血糖値の乱高下とインスリンスパイクの反動による『生化学的な気絶(システムダウン)』に他ならない。

だからこそ、この作品を読んだとき、あまりのシュールさに苦笑しかなかった。

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』

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彼女が見せる恍惚に浸るあの表情。あれは漫画的誇張などではない。
かつてサウナ上がりの特盛うな重で脳のブレーカーを強制切断された、「あの時の私」そのものだったからだ。

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│ ⚠ WARNING:生化学的デスゲームの観測記録(ドカ食い気絶部)│

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◆ これはグルメ漫画ではない。「命」をチップにした狂気のデスゲームだ。

本作の主人公・望月さん(21歳)は、おっとりした外見のOLでありながら、尋常ならざる量の炭水化物と脂質を胃袋に叩き込む筋金入りの「ドカ食い狂徒」だ。

表層だけを見れば「ぽっちゃり女子の背徳グルメコメディ」に見えるかもしれない。しかし、この作品の根底に流れている空気は、美味しそうなご飯への共感などではない。

麻雀漫画の金字塔・福本伸之著『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』において、赤木しげるはこう言い放った。

「面白い! 狂気の沙汰ほど面白い・・・!」

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感想(0件)

アカギが鷲巣麻雀で自らの血液をガラスのシリンダーに抜き取らせながら平然と牌を引いたように、望月さんが卓上に並べているのは、ただの料理ではない。彼女は「健康寿命」をチップ代わりに全ベットして、ドカ食いという名の狂気に倍プッシュを続けているのだ。

【生化学的・強制シャットダウンへのフロー】

彼女が作中で見せる「至る」瞬間。
グルメ漫画特有の「あぁ、美味い」という素朴な充足感ではない。
食欲や血糖値のコントロールという、己のボディメイクにおける絶対的な主導権を放棄し、狂気に身を委ねる自傷行為に他ならない。 ここで、彼女の体内で起きている破滅の連鎖を可視化しよう。
●[精製糖質(高GI食品)の過剰摂取]
▶[血糖値の急上昇]
▶[高血糖状態にて分泌されるインスリンによる血糖値の急降下]
▶[脳へのグルコース供給断絶が生み出す、システムダウンと疑似的な多幸感]

人体の安全装置(ホメオスタシス)を力任せに破壊し、脳のブレーカーを自ら落とす。
「栄養バランス」や「健康寿命」という人体のセオリー(合理性)をすべて嘲笑い、「身体を壊す不合理ゆえに、この一口がなければ死ぬ」と言わんばかりに限界を突破していく。

読者は彼女の食べっぷりに共感しているのではない。

「おいおい、そのレートで張るのかよ……」

「まだ炭水化物を重ねるのか……!?」

と、死線に突っ込んで笑う狂気のギャンブラーを見つめるように、息を呑んで戦慄しているのだ。

◆ 安全圏から覗き込む日常の闇「破滅の特異点」

人間には誰しも、「健康」や「社会性」という規律をすべてかなぐり捨てて、破滅的な快楽に身を委ねて自爆してみたいという潜在的な自己破壊衝動が眠っている。

しかし、常人は理性でブレーキをかける。サウナ上がりの特盛うな重で頭のブレーカーが落ちた経験があれば、「危なかった、二度とやるまい」と思いつつも、並盛なら大丈夫かなと学習して日常の安全圏へ引き返す。

ところが望月さんという怪異は、ブレーキを踏む素振りはするものの、餓鬼のような形相でアクセルを床までベタ踏みして崖からダイブ(至る)する。

常人には到底真似できない圧倒的な「命への無頓着さ」。

だからこそ読者は彼女から目を離せない。彼女は、私たちが決して踏み込めない「暴食の特異点」へ代わりに突っ込んでいくダークヒーローなのだ。

◆ 血管を削らずに「至る」、最もクリーンな快楽摂取法

ドカ食いは甘美である。
脳がとろけるような多幸感も本物だ(擬似的ではあるが)。
だが、その快楽の代償として支払うのは「血管の耐久値」であり「すい臓の寿命」である。”サウナ後の特盛うな重”で人体の強制シャットダウンを経験した私だからこそ断言できるが、生身の肉体でこれを繰り返すのは食事版ロシアンルーレットに他ならない。

しかし、私たちには『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』を読むという、極めて合法的で安全な迂回路がある。 画面の向こうで彼女が自身の体内に繰り出す炭水化物爆撃を見届けるだけで、こちらの脳内報酬系は安全に刺激される。血管を1ミリも傷つけることなく、血糖値をフラットに保ちインスリンを沈黙させたまま、ドカ食いの背徳感と多幸感のログだけを安全圏から眺めることができるのだ。

狂気の沙汰は、紙面越しに覗き込むぐらいで。良い子は決して真似しないように(大人も)。

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